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やっぱりここが元祖、野沢菜漬発祥の地。 4月17日、東京にも遅い、遅い雪が降った日。 もちろん、野沢温泉村も雪に覆われていた。 すでに僕は、野沢漬の発祥は、野沢温泉村の「野沢」であることは気付いていた。 だが、実際に訪ねてみると感慨深いものがこみ上げてくる。 長野といえば「蕎麦と野沢菜」。 県内のどこに行っても売っている。 僕の出身の長野県佐久市でも「野沢菜」はあまりにも有名。 というか、ご飯に、お茶に付き添うのが日常である。 僕の「野沢」と「野沢菜」 その野沢菜の「野沢」だが。 子供の頃は、「近くの野沢」と勘違いしていた。 佐久市は50年くらい前に、中込町を挟む野沢町と岩村田町が合併して発足した。 僕の出身の中込町から千曲川の「野沢橋」を渡ると、そこが野沢町。 この辺から眺める浅間山は最も美しい。 もともとは中込町よりも野沢町が栄えていたのだが。 JR小海線の駅が、野沢町の反対で中込町にできることになり。 中込駅を中心に商店街が活発化していく。 中込町には1875年(明治8年)に建設され、国史跡で重要文化財に指定された旧中込学校があるものの、野沢町の文化度には負けている。 子供心にそんな気分があった。 7月下旬の「野沢の祇園祭」は毎年、相当な賑わいをみせる。 ところが中込町では8月のお盆に、駅前での盆踊りくらいしかない。 従姉妹の日向幸子さんの援助で僕は、ヴァイオリン教室に通っていた。 その教室も野沢町にあった。 野沢橋を渡る千曲バスは子供料金で5円だった。 だからいつも、「野沢」にご縁の「野沢菜」もありがたくいただいていたのだ。 大学から僕は東京に出るのだが。 その頃から毎年、長兄が年末に「野沢菜漬」を樽で運んできてくれた。 会社に入ってからは、この僕の野沢菜を喜んでくれた仲間も多い。 とにかく美味しだった。 初めて本物の「野沢菜漬」に出会う ところが、僕にとっては「野沢菜事件」に勃発する。 勤務地は東京・大手町からすぐ隣の東京・内神田に移り。 さらに神田・淡路町に移った時に。 自分の田舎の野沢菜よりも、はるかに旨い野沢菜に出会う。 出会ったのは丸の内線淡路町駅付近の小さな鰻屋兼居酒屋。 昼は鰻屋、夜は居酒屋だった。 いま、名前は思い出せない。 (たぶん、これを読んだ昔の仲間が教えてくれるだろう) その鰻屋である時。 ご太い野沢菜がちょろっと出された。 その乳酸菌の効いた旨さに、僕はびっくり。 「旨いねえ。どこの野沢菜?」とオヤジに尋ねた。 「俺の田舎だよ。送ってきたんだ」。 「田舎ってどこだよ」 「どこって、長野県北部県境地方。それだけで郵便は届くんだ」 あの時のオヤジとの会話は今でも忘れられない。 その時から僕は、子供の頃の野沢町への憧れから、野沢温泉村へと変わった。 僕は毎回のように野沢菜をせびる。 その味はさらに鼈甲色に輝き、旨さを増していく。 乳酸菌の力で、野沢菜漬としての完成度をさらに深めていったのだろう。 ああ、あの時の鰻屋のオヤジ、今いずこに。 ようやく、元祖地「野沢温泉村」に辿りついた そんな僕の野沢菜物語。 今回初めて野沢温泉村を訪ねて。 地元大手のとみき漬物の富井義裕社長に出会えて。 ようやく、しっかりと野沢菜漬の秘密をつかめた。 話はなんと1756年(宝暦6年)に遡る。 野沢温泉村の名刹薬王山健命寺の八代住職昇天園端大和尚が主人公だ。 京都に遊学の際に、浪速の天王寺蕪の種子を持ち帰ったのが野沢の始まり。 寺内の法泉地畑に蒔いたところ、北信濃野沢温泉の風土、気候、土地に合い。 根も茎も蕪も大きくなり「野沢菜」と名づけられたと言い伝えられている。 今でも寺の法泉寺畑で採取した種子を野沢菜の原種としている野沢温泉村。 以来、寺の重要な収入源の一つにもなっているという。 種子に純粋性を保つため昔から農家では、油菜種や、交配するような種子の栽培を禁じて雑種が出来ないように務めている。 こうした野沢菜の種子が、長野県一帯と新潟県一帯に出荷され冬の味覚を作ってきた。 富井義裕社長はとみき漬物の三代目社長。 昔ながらの手法にこだわり、安全・安心にこだわり。 さらに機械化を進めてきた。 旨い以上に栄養価、抗酸化に驚く
「野沢菜の漬物は成人病やガンの予防上最も優れた漬物と称賛せざるを得ない」 読売新聞の「論点」にそう発表されたことがあるんです、と富井社長。 テレビの情報番組では、こんな説明もあったという。 野沢菜、お茶とも単体ではごく微量の抗酸化度だったものの、 この2つを食べ合わせると「ものすごく大きい驚く程の抗酸化力に変わる」と。 ひょっとして、全国1位を争う長野県の長寿命に、この組み合わせが貢献しているかも。 富井社長はそう解説する。 ちなみに、野沢菜250gあたりの栄養価もすごい。 ビタミンAはカボチャ1個分、ビタミンCはミカン4個分、カルシウムは牛乳275cc分、繊維はレタス1個分という。 そんな野沢菜漬。 本漬けのシーズンが終わった春も、「春野沢菜漬」の出荷は今日も続く。 このシーズンは、氷冷蔵(-3℃)の中で2~3週間、樽でじっくり熟成させる。 自然の風味を活かし、天日塩でうす塩味に漬け込む。 他社では合成調味液に入れて数日位で作ってしまうことが多い、と富井社長は話す。 漬け込んだ後のパッケージングは機械化が進んでいる。 そんな「とみき漬物に感謝の便り」が続々届く。 それが、同社と同社従業員の励みだ。 この日、僕が東京から訪ねることを知った紹介者の関係者も同行してくださった。 (財)長野県農業開発公社の北信支所参事の篠原初さんだ。 名刺のキャッチフレーズに「あしたの信州農業をつくるパートナー」とある。 特に遊休荒廃農地の解消に農地の斡旋などの業務に携わっているという。 雪に耐えて、また明日につなぐ
富井社長が二人を自社の野沢菜畑を案内してくださった。 あいにくの雪にうずもれている野沢菜。 それでも、こんなにも青々と。 そして、雪が融けて真ん中の芯からトウダチし、一斉に菜の花畑に、 そしてそれが、次の畑の種になるのだという。 雪に埋もれていても、こんなにも元気だ。 そういえば秋に育つ野沢菜も。 霜が降りてこそ、野沢菜は美味しくなる。 それは、子供の頃から知っていた。 それにしても4月17日なのに。 今年は特別かも知れないが。 こんなにも銀世界。 これが、とみき漬物の漬物工場。 ここからの美味しさを全国にお届けしたい。 |
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