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ホーム  >  【特集】信州最南端・根羽村のネバーギブアップ




村域の92%が山林で、455世帯、人口1,137人の過疎の村だ。
田畑はごくわずかで林業しか道がなかった。

なんとかしたい思いで、小木曽亮弌村長は複合施設「ネバーランド」を1996年7月にオープン、見事に黒字運営に漕ぎ着けた。村の自然を活かした商品も提供している。





今年の5月の連休に、根羽村役場に小木曽亮弌村長を訪ねた。
ほぼ1年振りの訪問。いつもながら、村長の大歓迎は嬉しい。
そして、ネバーランドでは新しい発見がいくつもあった。
採れたて長野との取引も大きく拡大することになる。

昨年はネバーランドの宿泊設備を利用させていただいた。
村内5軒の酪農家からの牛乳と自家製ヨーグルトに感激。
採れたて長野でネット販売させていただくことにしたのだった。
ネバーランドから牛乳とヨーグルトのセットだけの販売。
近隣の安城市の方など根強いファンも付いた。

今年は根羽産の鹿、猪などのジビエ料理、うどん、そばなど。
さらには近隣のカレー、柿酢、りんご酢、トマトケチャップなども加わる。





僕の根羽村との関わり。
川上村の藤原忠彦村長が小木曽亮弌村長を紹介してくださったのがきっかけだった。
川上村の最高級レタスをネットで販売しようという試み。
レタスだけでは難しいという直感から「採れたて長野」という名前を付けて。
レタス以外の「採れたて名品」を探した。

藤原忠彦村長のつながりで根羽村のヨーグルトにつながり。
さらには、南相木村のミネラル白菜、木島平村のキノコと広がる。
僕はすっかり「村」が好きになった。

川上村の藤原忠彦村長との出会いも不思議な縁だった。
情報通信絡みの記者だった僕は、その関係者からご紹介いただいた。
その縁で当社から藤原忠彦著「平均年収2500万円の農村」を発行させていただく。
それがきっかけで、川上レタスのネット販売につながったのだった。





思い起こせば、出版社で30歳前後の頃だった。
僕は仲間と川上村の高原野菜作りのお手伝いで、6年連続訪ねていた。
今にして思えば、長い年月を経て再び神様が結んでくれたのかも知れない。

寒村だった川上村をなんとかしようと、村長は遠く長野市の県庁に足げく出向く。
そんな村長は県でも一目置かれる存在になっていた。
ある時、村長は、尊敬する県の担当官に聞く。

「僕みたいに、よく相談にやってくる村長は別にもいますか」
「ああ、いるいる。今度、同じ日に出くわしたら紹介するよ」

そんな会話があって、かなり時が過ぎていたが。
その時はやってきた。
紹介されたのは、根羽村の小木曽亮弌村長だった。
それ以来、二人は意気投合、何かと相談し合う中になる。
年下の小木曽亮弌村長は藤原忠彦村長を「兄貴」としたう。





就任以来、早くも20年目を迎える小木曽亮弌村長。
苦労の連続だった。
雨量の多い根羽村は「根羽杉」が有名だ。
その象徴が村の中心部に残る樹齢1800年を超える大杉。
長野県下で最も古木に認定されている。

かつては国の政策で植林をして、それが育ち、豊かだった。
村有林は全村民の所有に分けた。
だから、全てがその恵みを受けてきた。

ところが、次第に安い外材に押されていく。
村にあった4つの製材場は次々に廃業に追い込まれた。

最後の1社が廃業すると言った時、小木曽村長は村で買いたいと申し出た。
その時、議会の大反対に遭う。
「そんな借金、赤字を背負ってどうするつもりか」と。

「この村は林業しかない村。それを捨てたらどうなるのか。ここは頑張るしかない」。
小木曽村長は身を挺して押し切った。

この時、近代的な製材設備と木材乾燥施設を新設した。
同時に、総合施設のネバーランドを建設。
このために第三セクターで株式会社ネバーランド(小木曽亮弌社長)を設立した。
県や国の協力を得た成果だった。





同時に、名古屋市周辺で「空気のきれいな田舎で働こう」キャンペーンを実施。
有能な若者たちが、製材業やレストランや乳製品の工場にと参加してくれた。
根羽村という大自然の中で「働きたい」と言ってくれたのだった。

今、優秀な若者たちが、根羽杉で住宅用木材を提供してくれている。
毎年、全国で300戸の根羽杉住宅が建つ。

こんなこともあった。
かつて国との約束で進めてきた植林事業。
最後の大量伐採の時がやってきて、小木曽亮弌村長は大いに悩む。
伐採後の売上の半額を国に納める約束だった。
なんとか約束を延ばしてくれないものか。
国との交渉は困難を極めた。

国へ収める金額は推定1億5000万円だった。
お金さえあれば、なんとかなるのか。
八方塞の状況で、手を差し伸べてくれたのが、愛知県安城市だった。

根羽村を水源とする矢作川は、愛知県の安城市に流れ込む。
ここで、日本のデンマークと言われる豊かな農村を支えている。

遠い昔から「水を使う者、水を作るべし」という崇高な考えを掲げてきたという安城市。
1991年、「森林整備協定」に基く、全国第1号の契約を結ぶ。
いわゆる上下水流の協力関係だ。
国と戦って一部の伐採を止める事に、安城市が1億5000万円を捻出してくれた。

翌年、不思議なことに、今度は国から大きく評価される。
1992年、時の宮澤喜一首相から総理大臣表彰を受けた。
緑化推進運動功労団体としての受賞だった。





ネバーランドは宿泊設備やレストラン、ショップを経営する。
レストランにつながる棟には、地元食材の処理施設が並ぶ。
豆腐工場、牛乳処理、ヨーグルト製造、アイスクリーム製造、鹿処理設備などだ。

ここでの名物シェフが、副支配人・料理長の桑原幸一郎さん。
ヨーロッパや日本での有名ホテルなどでジビエ(野生動物)料理を学んだ。
根羽村でも例外ではなく、鹿や猪の農産物被害で悩む。
そこで、桑原幸一郎シェフの出番となった。

「射撃で捉えた鹿は買わない。罠で気を失っている鹿だけにしてほしい」
地元猟友会へのシェフの注文は徹底している。
射撃では大量の玉が入る上に、血抜きが難しく、味が落ちるからという。

持ち込まれた鹿は、全てシェフの手で処理される。
最終的は味付けまで施して売り出した。
南信州産根羽鹿肉「肉のくわちゃん」がそれだ。
シェフの名前を盛り込んだ。
レストランでも「鹿肉のから揚げ」が人気だ。

女性に大人気の臭味のない肉。
脂身の少ないヘルシーな肉質。
桑ちゃん特性の漬けこみダレ。
それが特徴だという。

そういえば、父親が木曽の出身だったという長野県知事の村井仁さんは、ジビエ料理の大ファンだという。
ネバーランドのレストランには記念撮影の写真が飾られていた。





村には5軒の酪農家がいる。
これをなんとか活かそうというのが、小木曽亮弌社長の方針。
そこで、ネバーランド内に牛乳処理、ヨーグルト、アイスクリームの工場を作った。

その第一線に立つのが根羽村振興課長の大久保憲一さんだ。
小木曽亮弌社長は「全て任せるから社長のつもりでやれ」と檄を飛ばす。
村内の大豆、水を活かした豆腐のほか、気合のうどん、大杉そばなども大人気だ。

そのほか、近隣からの食材も逸品が揃ってきた。
飯田市からの「馬肉カレー」。
名古屋からの「高原コーチンのチキンカレー」
実は根羽村の隣は愛知県豊田市。
名古屋は近隣なのだ。

それに、「純りんご酢」「手づくり柿酢」「トマトケチャップ」
ジャム・ジュース加工で有名な小池手作り農産加工所製だ。
工場は飯田市や喬木村にある。

そういえば昨年。
川上村からトラック1台ものレタスを積み込んできて、ネバーランドで販売。
あれよあれよという間に売り切れて。
急遽、2台目を取りに戻ったとか。

川上村と根羽村。
高速道路を使っても片道3時間は掛かるのだが。
双方の笑顔が浮かぶ。

(荒井 久)














































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